Dolls Museum

マトリョーシカ

 マトリョーシカは、ロシアを代表する民芸品として広く知られる入れ子人形です。白樺や菩提樹を素材に、大小の人形を重ね合わせる構造を持ち、最も大きな人形の中に次々と小さな人形が収められています。1900年のパリ万国博覧会で銅メダルを受賞したことを契機にロシア各地で盛んに制作されるようになり、やがて国を象徴する土産品として世界に広まりました。
そして、実は誕生の背景には日本との関わりがあります。19世紀末、神奈川県箱根町にあったロシア正教会の別荘を訪れた修道士が、日本の「箱根ろくろ細工」を本国に持ち帰ったことから着想を得て、最初のマトリョーシカが生まれたと考えられています。当館では、この十二組子卵をはじめ、様々な意匠のマトリョーシカを収蔵しています。
 コレクションの中には、作家の手による一点物の作品や、高さ1メートルに及ぶ大型のマトリョーシカも含まれています。後者は森林保護の観点から現在では制作されていない希少なもので、30体の入れ子が仕込まれ、胴体部分にはロシアの著名な物語が描かれています。また25体入りの作品もあり、いずれもロシア文化の豊かな表現力と芸術性を今に伝える貴重な資料となっています。