Dolls Museum

金蒔絵踊り子像

 当館所蔵の「金蒔絵踊り子像」は、日本各地の伝統的な職人技が結集して生み出された明治期の輸出工芸品、いわゆる「ハマモノ」のひとつです。金沢は日本の金箔生産の九割以上を占め、その湿潤な気候は静電気を嫌う金箔づくりに最適とされてきました。粘り強く繊細な作業を要する金箔製造は金沢の職人気質にも適しており、本作にもその高度な技が活かされています。
人形の顔・手・足には象牙が用いられ、帯には銀、髪飾りにはルビーがあしらわれています。こうした素材の巧みな組み合わせにより、上品で華やかな姿が表現されています。
「ハマモノ」とは、長い鎖国の時代を経て明治期に入り、横浜をはじめとする港町から海外へ輸出された工芸品を指す言葉です。有田焼や薩摩焼などもその代表例であり、本像もまた、金沢の金箔職人や千葉の象牙職人など各地の名工が分業し、西洋人の嗜好に合わせて制作したものと考えられます。
当館所蔵の本作は、かつて海外に渡り、その後日本に戻ってきた「里帰り品」であり、異国の人々を魅了した芸者像を伝える貴重な作品です。